それはまるで、一世を風靡したアニメ「SLAM DUNK」のオープニングシーンのようだった。
扉を開けると暗がりの会場。青白く照らされた中央のコート。色とりどりの光のビームが周囲を駆け巡り、地響きのような大歓声に包まれると、あっという間に最高潮の興奮を覚えた。
25日に東京の有明コロシアムで行われた日本プロバスケットボールのbjリーグ・優勝決定戦は、試合内容もさることながら会場のムードそのものが、他のプロスポーツとは一線を画した魅力に満ちていた。
米プロバスケットボールNBAのように、華やかに光と音で演出された会場。なかでも興味深かったのは観客層の多様性だ。スポーツ好き風の20代30代の男女から、ベビーカーを伴った若い夫婦に、選手と思しき長身の青年、ピンヒールを履きこなすモデルのような外国人女性、地元のおじちゃんおばちゃんに、楽しげながらノリが怪しい老夫妻まで、実に様々な老若男女が場内をぐるりと埋め尽くしていた。
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前日の準決勝から決勝戦にコマを進めたのは、東地区を制した秋田ノーザンハピネッツと、西地区を制した琉球ゴールデンキングス。ゴールエンドには、両チームのブースター(ファン)が一丸となって華やかな声援を送っていた。
チームカラーのピンクで客席を染めたノーザンハピネッツと白とゴールドが眩しいゴールデンキングスの両ブースターが奏でる応援光景は、圧巻だ。結果は、103‐89で西地区の琉球ゴールデンキングスが2季ぶり3度目の優勝を収めたが、最後の最後まで、両チームのブースターはシュートが入る度、割れんばかりの歓声と悲鳴を上げ続けた。
日本で国際的な実績の乏しいバスケットボールは、野球やサッカーに比べると、人気も注目度もまだまだ。国内にはbjリーグのほかにJBA(日本バスケットボール協会)に近いトップリーグ(通称NBL)が存在するなど、日本のバスケ界には大人の事情が垣間見える。
それでも最近は、コートの内外で観客を楽しませようと凝らしてきた工夫が奏功し、特にbjリーグは国内各地から新規参入球団が加盟し、近年は身近なプロスポーツとして認知を深めている。
bjリーグでは、ハイレベルなゲームとエンターテインメント性を高めるため、外国人選手も招聘。日本人選手を強化するバランスを試行錯誤しつつ、外国人枠と競技ルールを柔軟に変えてきた。2012-2013シーズンからは「外国人選手の同時プレーは第1・第3クオーターでは最大2名、第2・第4クオーターでは最大3名」と改定。小柄な日本人選手がスピードを武器に低い重心をキープしながら、大柄な外国人の間をぬってシュートを決めるという鳥肌もののシーンや、外国人選手とのコンビネーションによる迫力のあるダンクシュートやブロックショット・リバウンドといったバスケットボールの花形とも言えるプレーを見るチャンスがより増えた。
試合だけでなく、会場ではオープニング時などの音と光のショーに加え、タイムアウトの度にチアガールがダンスで場内を盛り上げ、ハーフタイムイベントはアーティストやアイドルのライブやチアのパフォーマンスなど盛り沢山だ。
多彩なファンサービスで、ブースターは試合中もそれ以外の時間も存分に楽しめる。その上応援もアツい。時に1つのプレーで、すり鉢状の有明コロシアムが揺れんばかりの大歓声が響きわたる。その場にいると、選手とブースターが一丸となって試合に臨んでいるのが全身の毛穴から伝わり、鳥肌が立ってくるほどだ。
プレーの質の向上は、見るものの目を肥やし、見られることで、アスリートたちは鼓舞する。bjリーグは、プロスポーツとして着実に成長を続けている。それが証拠にプレーオフの決勝戦は、1万人を超える観客が集まり、満員札止めの大盛況となった。
子どものころ、誰もが慣れ親しんだバスケットボール。bjリーグのコンセプトは、グローバル(国際性)とローカル(地域性)を合わせた「グローカル」だ。現在、青森から沖縄まで、21チームがしのぎを削りあうbjリーグは、チーム名を見ているだけで楽しい気分になれる。また決勝戦で敗れはしたものの、秋田ノーザンハピネッツのパートナーには、秋田出身の小さな大投手、東京ヤクルトスワローズの石川雅規も名を連ねるなどサポート陣の顔ぶれも多彩だ。
決勝戦には90社200名もの報道陣が取材に赴いたが、大勢のメディア関係者が「楽しかった」「面白かった」「鳥肌が立った」と感想をもらしたほど。老若男女を惹きつけるバスケットボールは、一度観戦して雰囲気を体感してみると、きっとその理由がわかるはずだ。今秋に開幕する2014‐2015シーズンが早くも待ち遠しい。