個人差が大きいのが「老化」の特徴
医師の間では「閉経の10年前まで産める」と言われています。閉経には大きな個人差があるので、産めなくなる年齢にも同じように個人差がかなりあります。閉経は40代前半から50代中頃までに起きますので、30代中頃から40代中頃までのどこかに限界がある人が多いでしょう。
個人差は、老化のことを考える時にとても大切なポイントです。それは時代によっても変わります。私は『卵子老化の真実』を書いた時に日本で最古の高齢出産の記録を探したのですが、それは1925(大正14)年でした。避妊が日本で普及するのは第二次世界大戦後のこと。当時は、50代で出産する人が年間 3.648人もいました。
過信に気をつけて 高齢出産による不妊
集団を調べてその傾向を知ることはできます。ただ、自分という個人が早くから産めなくなってしまう人なのか、それとも50歳近くても産める人なのかはわかりません。医師にも、正確には判断できません。
アンチミューラリアンホルモン検査(AMH検査)という血液検査では卵子の在庫数が推定でき、体外受精の採卵数と相関関係があるので非常に注目されています。ただし、この検査の値が低くても、質のいい卵子が排卵すれば妊娠します。
ただ「自分は遅くまで産める身体」と過信してしまうと、実はそうではなくて、あとで後悔するかもしれません。みんなが20代で産み終えていた高度経済成長期とは違い、30代、40代で出産する時代には、ひとりひとりが身体のことをよく知り、できることをやっていく必要があります。
「卵子の老化」の知識は、本当は不安な情報などではなく、「すべきことをして安心するための知識」なのです。
執筆者:河合 蘭