子どもの肘の痛みで肘内障という怪我があります。
1歳前後の小さなお子さんは非常にかわいいものです。でもあやそうとしたり抱き起こそうとしたときに、不用意に手を引っ張ったりすると、突然泣き出して手をだらんとしたまま動かさなくなってしまうことがあります。「子供の肩がはずれました!」と血相を変えて飛び込んでくるお母さんもいます。
きゃしゃな腕ですから、ちょっと引っ張っただけでもはずれてしまうと思うのも無理はありません。まして引っ張った“犯人が”自分であることが多いので心配もひとしおです。でも病院に来て、医者がちょっと腕を持って動かしただけであっという間に治ってしまいます。あまりのあっけなさにキツネにつままれたような顔をする方もおります。これは肘内障(ちゅうないしょう)といって、小さなお子さんに非常に多い肘(ひじ)の障害です。腕全体を動かさなくなってしまうので、肩がはずれたと思う方も多いのですが肘の障害なのです。 どのような状態かというと、肘の関節は図のように上腕骨、撓(とう)骨、尺骨の3つの骨でできていますが、撓骨は尺骨に輪状靭帯(りんじょうじんたい)という輪のようになった靭帯で固定されています。腕が引っ張られたときにこの靭帯が橈骨の先端の方にずれてしまうのです。 |
肘内障が起こるのは1~3歳くらいに多く、5歳以上では非常にまれです。これは輪状靭帯が未発達なためとか、橈骨の先端が小さいためだという説がありますが、正確なことろははっきりしません。何度も起こすお子さんもいますが、成長とともに自然に起きなくなるので心配いりません。大体、幼稚園の年長くらいになると大丈夫なようです。 診断さえつけば前述したように整復は非常に簡単です。手をちょっと引っ張っただけでは、いくら小さいお子さんとはいえ、そう簡単に関節がはずれたり骨折することはありませんので慌てることはありません。ただし一人で遊んでいて目を離したすきになったり、転んだときになったりすることもあるので、そのようなときには骨折との鑑別が問題になります。 まず、左右の腕を比べてみてください。はれていたり形が違うようでしたら骨折の可能性があります。また、肘内障の場合はある角度までは肘を曲げたりひねったりしても痛がらないという特徴があります。少し動かしても痛がる場合はほかの損傷が考えられます。 もう、お子さんが大きくなってしまったお母さんの中には、これを読んで懐かしく思い出された方が多いのではないでしょうか。また、小さなお子さんやお孫さんをお持ちの方は覚えていると、あまり慌てずに済むでしょう |
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