NHKクローズアップ現代「卵子老化の衝撃」など卵子の老化に関する報道が続き、生理学的に有利な年齢で出産する大切さが注目されています。これは、とてもいいことだと思いますが、その反面、誤解・曲解もたくさんあるようです。
1.「女性は卵子が老化し始めたら、もう産めない」という誤解
本当のところ何歳まで産めるの?
卵子の老化はとても長い年月をかけて少しずつ進行します。ですから、卵子の老化が指摘される年齢になっても、妊娠しなくなるのではありまん。少しずつ妊娠しにくくなるだけです。つまり、避妊をやめてから授かるまでの月数がかかるようになります。
よく「避妊をやめたら、すぐ妊婦になると思っていた」と言う人がいますが、30代妊娠では、なかなかそうはいかないわけです。でも、生殖機能が正常で、性生活もある男女であれば、時間はかかっても基本的に妊娠します。
避妊をしないで、長いあいだ産み続ける多産女性の出産年齢を第一子出産から順に聞いていくと、少しずつ間隔があくようになっていくので、そのことがよくわかります。20代では2年おきに1人産んでいた人が、同じ人なのに、40歳になると3~4年に1人になったりするのです。
35~39歳の女性が、一番妊娠しやすい日(排卵日の2日前)に性生活を持った場合、「3割が妊娠する」という統計があります。(1)
19~26歳の若い女性に較べると、この妊娠率は半分です。だから「妊娠しにくくなっている」と言えますが、だからといって妊娠しないわけではないのです。
ただ、漫然と待っていると時間切れになることもあるので、高齢妊娠は気をつけなければなりません。排卵日を意識しながら待ってもよい月数については「30代後半なら3~6ヶ月程度、40代ならもう少し早く」と言う医師が多いようです。これくらいのタイミングで受診しておくと、もし不妊治療をすることになっても、ゆとりがあります。
女性は 「卵子老化」が始まっても、そこで産めなくなるわけではありません。「34歳はセーフ、35歳はアウト」「精子は老化しない」もウソです。今、女性たちの間で卵子老化の不安が高まっていますが、誤解もたくさんあります。
執筆者:河合 蘭